<動ける体、地域に>

中山 保

やあ、やあっと振りだね、元気?そりゃええね、うん、ありがとう、お陰様で。

時にあんた何してる? ほう2年前停年、もうそんな年齢なの。え、遊んでる、テレビの番人、それに庭いじり、へえー何んにもやってないの。

町内会の役なんかも、なぜ? 誰も知っている人がいないって、ふんでも、回覧なんか見るら?そりゃ奥さんが見てるからええってもんじゃないら。

行事なんかにいくずら、でもさ、こっちから「こんちわっ」て行けば、役をやらされるからって、そりゃちったあ、てんだえば。
そんなこたあ、あらすか、あんたなら何でもできるらあ。

ちがうちがう、でしゃばりじゃないよ、奉仕だよ、社会奉仕。

 最初は、わしだってそうだったよ。退職するとき、上司から「今までは会社人だったが、これからは社会人になって地域社会に恩返しをしなさい」て、ゆわれた。

そんで何か町内会のてんだいでもとおもったのが始まりで、今もってボランティアでさあたれている。

 でもさあ、朝、眼がさめて、今日はあの仕事から片付けよう」なんて毎日張り合いがある。遊んでちあ体が。やごくなっちぁぐと思って、健康維持の目的もあったけどさ。

 あんたも何か一つ位やってみたら。でもOB会は過去のことばっかりづら、つまんないじゃん。

 新しい友達はええよ、新鮮だよ、こんな世界もあるんだなあ…と思った。

私も「OB会の旅行にいかずよ」って誘われたけど、町内の老人会の旅行の方にした。

OB会の友人も大切だが、これから交際していかなければならない隣人も大切だ。

「悪いこたあゆわん、あんたも何か地域のことやってみたら、自分のできることだけでええんだ。

 ああ俺をまだ必要とする社会もあったんだ、俺もまだ人の為に役立つこともできるんだなあ…って、ほのぼのとするよ。
 あんたまだ若いし今からそんな自分の事ばっかし考えていちゃあおえんで、ちったあ人の為になるようなことしたらどうづら。

 楽しかった過去ばかり追ってちゃあおえんで、もっと前向きに、残りの人生に何かを求めていかなくちゃあ。

 おらんとこもそうだが、最近、町内の世話役が高齢化して、今、世代交代の時期なんだよ。あんたらみたいな熟年の働き盛りが遊んでいるなんてもったいない、つまんない。

そりゃけっこいことばっかしじゃないよ、でも、人間なんて、からっきし刺激がなけりゃええかげん馬鹿になっちゃう。 
ろくざっぽう会話がなくちゃあ脳味噌も、しいけっちゃう。

 まあ、人間、一生いのけるうちは、いのけってゆうことさ。

 ほう、やってみる、そりゃええねえ…あんまり、せんしょうきらなくったってええから、てんだうって感じでやってみるんだね、何事も挑戦だよ。

こんだあいつ逢えるかしんないけど、きっとあんたの顔色も変っていると思うよ。

 あんたと話をしていると、つい遠州の方言がでちゃうね。じゃあまたね。




静岡市安東一丁目
中山 保 (81歳)