パソコンと点字を友として

静岡市千代田
笠原 昭男

パソコンも点字も、つき合いは4半世紀を楽に越えます。
パソコンは創生期から手がけているので、趣味レベル程度なら最新のノウハウについても、ほとんど抵抗無く吸収できています。
パソコンは点字と同様、趣味というよりも旧勤務先(静岡盲学校)での仕事の必要性から習得したものです。
バリアフリーが叫ばれている現在、点字とパソコンはその有力な武器となっていますし、定年後の私の生活にも不可欠のものとなっています。

私の場合は、特殊なケースになるかもしれませんが、熟年の方々に何らかの参考になれば幸いということで筆をとりました。

9月某日、静岡盲学校の図書室、静岡点訳奉仕会の例会の日です。私はパソコン点訳部の役員ですが、今年は26名の会員が在籍しています。その日の内容は最近の活動状況の報告と、来月、盲学校で行われる「静盲まつり」の準備です。

待っているうちに、三々五々会員が見えられて、やがて10数名が揃いました。
大部分が女性で、多くの方が十分熟年を自覚されていると推測される年令層に属します。
しかし、ここ数年は私の子どもに近い会員が徐々に増え、パソコンの知識もある面では私を上回るので、「負うた子に教えられ」で彼女らのノウハウも適宜取り入れさせてもらっています。

役員の私は、今年は「静盲まつり」でパソコン点訳をマンツーマンで教えるコーナーを特設することを提案しました。
「静盲まつい」は毎年、秋に開催され、私たちの会も教室の1つを「点字コーナー」として借りて、点字や指導をおこなっています。

小学校の教科書にも点字を題材とした部分があり、小学生の点字に対する関心はますます高くなり、毎年、このコーナーは盛況です。もちろんパソコン点訳部でも一角にコーナーがありPRは行ってきましたが、今年は1歩前進して積極的にパソコン点訳を実体験しようという試みです。
指導は会員が行い、そこでの点訳したものは点字の打ち出せるプリンターにかけてお土産に持ち帰ってもらいます。
また、パソコン点訳もWindowsの時代となって様変わりし、旧タイプからの移行に苦心している県内のボランティアも多いので、その相談コーナーも開設させます。

私の提案には全員の賛成が得られ、指導の割り振り、必要なパソコンの確保を決めて、あとは、この催しに必要な掲示などの作成に移りました。
また、私から希望者が殺到したときの整理のために予約券を発行したらという意見に、若年層の会員が早速学校のパソコン室に入り、Excelを使ってたちまち予約券は完成させてくれました。
点字コーナー彩る色紙の花も完成し、当日を待つばかりとなり解散しました。

また作業の前に、7月から分担した共同のパソコン点訳が完成したことも私から報告しました。
これは県内の視覚障害の方から、静岡県点字図書館に第1次司法試験の憲法、刑法、民法の参考書の点訳の依頼があり、私たちの会も民法の点訳をお手伝いすることになったのです。これも、役員の私が独断で仕事を引き受けてきて皆さんの協力を仰ぎ、点訳に着手していただいた事業です。
現本は400ページあり、点訳すると1700ページを越えます。最終的な校正、編集の責任者は私で10巻きに分冊して完成させました。

司法試験と言えば専門的な言葉が続出し、点訳のベテランと言えども容易い仕事が出来る訳ではありません。そこで、分担をお願いするときに専門用語の読み方の一覧表を各人に配布しました。
これは、地方公務員試験の民法編の書籍が多くふりがながあるのを発見し私が通読してまとめました。パソコンをやっている強みで、点訳されたものは随時、電子メールに添付されて私の自宅に配信されますし、ときどきの細部の質問にも答えることが出来るのです。

昨年は身体障害者相談員必携という大作を完成させました。

通常の活動は、個人に現本を選んでもらい私の許可を得て、点訳してもらっています。
作品はインターネットを通して全国の4000人以上の盲学校の児童生徒が利用可能なシステムに登録しています。
また、今年は全国の視聴障害者が利用可能なネットにも加入する手続きをとりました。

各地区で年に数回は点訳講習会が開かれています。これから何か福祉に貢献しつつ、活動を楽しみたいという方々は、是非点訳活動をお勧めします。

音楽の好きな方は楽譜の点訳のジャンルもあります。点字とパソコンは、これからも私の生涯の友となるでしょう。