水資源を大切に

 今夏七月六日から十三日迄の八日間、旧静中時代の同級生九名と、モンゴル国を訪問する機会を持ちました。

在学時は軍国少年教育を受け、「萬里の長城で小便すればゴビの砂漠に虹が立つ」の言葉通りの気宇壮大の気概で旅たちました。

近年社会主義国家となり、目覚しい発展を遂げつつある国です。大昔ヨーロッパを含め東洋に君臨した歴史のある大国モンゴルのこと故、さぞ古き良き時代の教訓を生かし、水資源も豊かになって居り、宿泊のホテルでの生活には不自由は無いと思いましたが、案に相違して、ジンギス・ハーン時代と大差なし、と申す外ないと思われる様子であり、水の貴重さは、旅行者は常時一本のミネラル・ウォーターを携行せねばならず、(単価1.5〜2米弗)これには生国静岡の生活と比較して、「天国と地獄の差あり」と言う言葉がピッタリと思われました。

 私は生まれも育ちも駿府の人間で、その生活水資源である安倍川や藁科川の水の恩恵を頂戴して参りました。

生業は地場産業の鏡台、針箱など木製品の販売を、北は北海道から南は九州、沖縄の端まで卸売をして来ました。よく旅先の旅籠で、毎度静岡の人は水の使い方ですぐ判ると注意を受けた憶えがあります。

安易に旨い水が手に入り資源も枯渇状態に陥った事も無く、天からの恵みそのもの、又、量の豊富さに慣れっこになって居る為で、水を金子を出して買い求める事など、論外である。

と、つい先日迄思って居りましたが、こうこ数年以前より、水資源や含有されるミネラル源などの理由から、ミネラル・ウォーターを人並みに求めてはいますが、それも精々月にニ、三本程度の事で、毎日の旅行中に忘れずに少なくとも一本はもって居らねばならず体調に悪影響を及ぼすことを、嫌と云う程教えられた旅でした。

ゲルと呼ばれる昔ながらのモンゴリアン風のツーリスト、キャンプにも四日程泊まりましたが、そのシャワールームでの水の出の悪さ湯量の少なさは、出発時の想像をはるかに越えて居り、遂にモンゴル国では、一度も風呂に入らず、やっと熱湯で浸したタオルで、体をふくぐらいで帰国しました。

日中は32℃になる日もある、彼地の事、今回の旅行で一番の苦痛でした。
よくよく考えて見るに、古代より多くの民族、宗教の伝播の史実のある、遊牧騎馬軍団国モンゴリアンの水に対する認識は、我々、訪問団が、行く先々で激しいスコールに出合い、水を持って来てくれた友人たちと、感謝、御礼を云はれた事実からも察しが付きました。

ユーラシア大陸の広大さや、奥行きの深さを知った時、私も今一度水に対する認識を、貴重な資源である!!と、学び直さなければ、此れから先の地球温暖化対策ともども、聲を大にして叫び度いと考えます。

今朝の毎日新聞に、ノーベル平和賞受賞者で、黒人初の大統領だった。南アフリカのネルソン・マンデラさん(84)が「環境、開発サミット」のイベント会場ウォータードームのオープン記念講演で、「水は民主化の証」とその大切さを世界に訴えたいと云う記事がのって居ました。

彼の偉大な功績は云うに及ばず、此の訴えに深く、厚く共鳴して今後は、資源として今迄以上に水を大切にして行きたいと痛感して居ります。

最後に帰宅時、拙宅では愚妻がその時の話題後、「まあよくも一週間も入浴もしていないの゛キタナラシイ"早くお風呂に入って頂戴との小言をもらい、精々と長風呂につかって、水の有難さを感じつつ旅のつかれをいやした事を書き加えて擱筆いたします。
静岡市田町
山崎 一男